あ ら す じ


『臨時ニュースをお伝えします。
 今日も桜が満開でしょう―――』

テレビから流れる、いつもと変わらないニュース。
春という名前の時間が、今日も流れていた。

「さーくん。部活、なくなっちゃったんだっけ?」

昨日、2238年度の始業式と入学式が行われた。
そして、部活始業の日でもあった。

「なんかよくわかんねーけど……廃部になってた」

田舎町の学校の水泳部だからって、あんまりな扱いだ。

「だったら、生活部に入らない? 楽しいよっ!」

つばめの表情は“この時を待ってました!”と、いわんばかりの笑顔だった。

「めーは、いつも生活部のことを話するけどさ。一体、どんな部活なんだ?」

「うーんと、簡単に説明すると……生きる活力を探求する、楽しい部のことだよ!」

まったく訳がわからなかった。

「わたしたちってさ、トコシエだよね。だから、とことん楽しく生きなきゃダメなんだよ」

老化のない世界、トコシエの世界。
永久にこの命が続くんだから、それはきっと……

「楽しくかぁ、そうかもしれないな」

「そうかもしれない……じゃなくって、そーなんだよっ!」

俺たちはまだ、生まれたばかりなのかもしれない。
この長い長い、命の中で。

「めー、時計見ろ! ぼやっとしてたら、もう時間だぞ!」

「本当だっ、もうこんな時間! おかあさん、行ってきます!」

「めー、待てっ! 俺をおいていくなっ!」

この永遠にも似た春の中で、この咲き誇る桜の下で。
俺たちは、春をする―――


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